STF135mmとSonnar135mmの比較

STF135mmはボケ味を追求した旧ミノルタのレンズでSonnarT*135mmと同じ焦点距離、その写りにどんな違いがあるのか簡単なチェックをしてみました。
なお、焦点距離表示はどちらも135mmですがSTFのほうが実際の焦点距離が長いとみえます。
以下はα100による撮影です(2007/03 窓からの天空光に若干の白熱灯、カメラ側設定はたぶんAWB)。

STF135mm F4.5

Sonnar135mm F4.5

前ボケはSonnarでは輪郭が見えるボケ、STFでは輪郭がなくスプレーでぼかすように広がります。
後ボケはSonnarもなめらかに消えてゆきますがSTFほどではありません。

レンズ設計では後ボケと前ボケを同じように処理するのは難しいようで、どちらにどういう比重をかけて設計するか、があるようです。
STFでは特殊なレンズ設計によってボケをなめらかにしていますが、代わりにレンズ口径に比して明るさが暗くなる犠牲を払っており、絞りリングはF目盛りでなく独自のT目盛りがあります。

私はSTFの前ボケに違和感を感じてしまいました。
近視に乱視なのですが、なめらかすぎて気持ちの悪いボケに感じるのです(^^;
乱視でないかたは注目物の手前の物がどう見えるのかなあ。
後ボケはさほどの差でもなく、後ボケでのボケ方は気になりません。

目に見える範囲に森と白い雲など明るさに差があるとき、注目するものに合わせて瞳孔の開閉(露出調整)が自動的に行われる。
そういう範囲を撮影するとき、白飛びや黒つぶれを許容してある範囲内に重点をおくか、明暗比を圧縮して全体を取り込むか。
考え方と表現はいろいろありそうですが、α100やα700でのDRO処理が圧縮と同義だと思います。

同様に、目は注目物に常に焦点を合わせているわけではなく、「目と注目物の間」でちょこちょこと焦点を移してなにかあればそれをチェックするような動きをしているのではないか。
それがぼやっとした正体不明の物体(^^;にしか見えないと落ち着かない、そんなことがあるのではないか。

ピントで圧縮は不可能、しかし絞れば許容範囲は広がる。
STF135mm F8.0
F8.0あたりまで絞ればそこになにがあるかわかる程度の前ボケとなって不自然には感じません。

Sonnar135mm F1.8
Sonnar135mmの開放F1.8ではスプレー状にぼけてゆきますが光点にはエッジが見えます。
ツアイスがやや芯のある前ボケを作り、後ボケには芯ができないようにバランスさせているのは、そういう人間の感覚も考慮しているからだと思っています。

Sonnar135mmやPlanar85mmでは開放F1.8やF1.4が注目されるようですが、私は開放で撮ることはめったにありません。
被写界深度が極端に浅くなって顔の一部あるいは花びらの一部にしかピントがなく、前後が急速にぼけていて不自然。
人間の目はそういう顕微鏡的な見方はしておらず、顔あるいは花というワンブロック全体に焦点を変えながら見ているのだと思います。

自然な感じに思えるのはF4あたりまで絞ったときと感じています、これは撮影距離にあまり関係ないのが面白い。
「目がひとかたまりとみなす範囲」は距離が近ければ狭く遠ければ広がる、カメラの被写界深度に似ているのかもしれません。
その範囲を被写界深度に収める、長焦点系での絞りの使い方のポイントだと思います。
写真という平面になったときに不自然にみえない撮り方(表現)であれば話は別ですけれど。


色味は総じてSTFのほうが青みの強い色(寒色方向)になるとみえます。
STFの方が露出アンダーになるのは特殊設計のためでしょう、レンズ側でAUTO、カメラ側はAEによる表示の絞り値を同じにしています。

色味と露出の差はRAW現像なら調整できる差ですから問題にはなりませんがボケ味は調整できません。
ただし、写真という平面像になると別の感覚(表現)も生じそうです。そういう画像を撮れるかどうか。
ボケは写真の脇役だと思います、脇役を生かせるかどうかは監督の腕次第か。


光源によっては色味と露出の差がよりはっきり出る場合もあります。
LEDダウンライト(東芝ライテック電灯色)による照明です(α700のWBは電灯での撮影)。
 左Sonnar135mm F6.3 右STF135mm F6.3 どちらもカメラ表示をF6.3としたAE
太陽光や白熱灯のようなスペクトルの光とは違うためかもしれませんが、STFとSonnarの差が大きくなっているように感じます。
現物とモニタ画面の比較ではSonnarのイメージが現物に近いです。

以下は冬晴の遠景です。カメラ内表示F6.3(現像でのWBはマニュアルで5000Kに一定です)。
STF135mm F6.3 左AWB 右太陽

Sonnar135mm F6.3 左AWB 右太陽

太陽光だと露出も色味も差が少なくなるようですが、STFはホワイトバランスのAWBと太陽光で露出にだいぶ差が出るのが??
STFではAWBで撮る方が無難そう、SonnarではAWBと太陽光での差はほとんどなし。

以下は上のSTFのAWBをSILKYPIX現像での露出を+0.2、WBを5200Kで現像したもの。

並べて比較すれば青みと黄色に差が見えますが、この画像と上のSonnarの画像とを識別できる方はまずいらっしゃらないと思います。
この風景に限れば、この現像設定の差が色味でのSTFとSonnarの差ということになりそうです。

ましかし・・現物とカメラ+モニタの画面を直接比較すると、当たり前ではありますが圧倒的に現物のほうがいい。
特にダイナミックレンジですね、明るいところは輝き、中間はクリアで硬くなく、暗い部分は深く沈む。
カメラ+モニタは足下にも及ばないといったところです。