蓄電池制御としては別項の並列型比例制御で一定電圧を保つのが簡単です。
しかし、制御するということはどういう方法であれ、過剰になっている太陽電池出力を捨てるということで、もったいないです。
蓄電池に大容量を使って、余剰などださずにすべて貯められるようにするのが本道だと思いますが、コストの問題もあるのでそうもいきません。
過剰になった太陽電池出力を捨てずに使うことはできないものか。
比例制御だと切り捨てる電圧と電流は不定ですから利用するのはむずかしい。
そこで、並列型のパルス制御で過剰電力の利用を試みてみました。
以下は私の場合の実験であって、配線状態、太陽電池、蓄電池などの組み合わせの総合での結果です。
他の条件ではどういう動作になるか保証はできません。
単に充電制御をなさる場合は比例式制御をお勧めいたします。

汎用電圧スイッチ(参考回路の項参照)の電圧設定を充電制御になる電圧設定として適当な器具に電力を消費させてやれば余剰電力を利用しながらパルス制御にもなるはずです。

温度補償回路を追加しました/2004-08-15
青の小信号用ダイオード2個です。おおよそ−0.02v/℃の補償になります。
蓄電池から離れた場所で大電流を流しても制御が安定するようにリモートセンシングにしてあります。
電流を負荷に流すオン電圧を15.2v、停止するオフ電圧を14.9vに設定しておきます。
過剰出力が生じるのは太陽電池出力が10A以上のときがほとんどなので、7Aほどを利用できるように2.2Ωの抵抗を負荷にしてあります。
太陽電池出力が10Aなら、蓄電池は10Aか3Aで充電され、負荷には0Aか7Aが流れるわけです。
7Aまで制御できる充電制御ということになりますが、現状はこれだけでは不足なので比例制御型を並列につないであります。
下図は動作のイメージ図です。

太陽電池の出力状況でこのパターンが繰り返されます。
橙色部分が蓄電池に充電される電力で、黄色部分が余剰として利用できる電力となります。
赤はパルス制御だけでは間に合わなくなった場合に、並列になっている比例制御が働く部分です。
(1)は制御回路がなにもしていない状態。
(2)の櫛の歯になっている部分が太陽電池出力と「太陽電池出力−7A」でパルス状の充電が行われる部分です。
パルス周波数は蓄電池を含めたインピーダンスとオンオフ電圧のヒステリシス設定の複合で決まります。
よく言えば自励式発振ですが、チャッタリングによるオンオフが繰り返される状態です。
机上テストでは5kHzの発振でしたが実際の発振周波数は約25kHzとなりました。
回路全体のインピーダンスの違いによるものと思います。
回路図中で水色部分にコンデンサを挿入すると電圧検出に遅延がかかって発振周波数を下げることができます。
100マイクロで1秒程度まで下がりますが、今回の実験ではコンデンサなしで25kHz発振としてあります。
(3)部分は太陽電池出力が増えて制御回路が7Aを消費しても蓄電池電圧が14.9v以下にはならなくなる状態で、発振は停止し常時オンで7Aを消費しつづけます。
赤の部分は太陽電池出力がさらに増えて電圧が上昇して比例制御が働く場合で、赤部分の電力は捨てるだけになります。
その後ふたたび(2)状態を経て、太陽電池出力が減って制御はオフのままとなります。
薄曇りとか雲が流れているなど太陽電池出力が微妙に変化する状況では、(1)(2)(3)の状態を数秒間隔で繰り返しています。
(2)の状態では発光ダイオードの明るさが暗くなるので目視で動作状態を確認できます。
以下は(2)状態でのオッシロ波形です。
回路を蓄電池の至近に置いているのでリモートセンシングは使っていません。
実際の太陽電池出力による実験なので微調整ができず、それぞれがまったく同じ状況にはなっていません。
骨董品のオーディオ用オッシロを使っているので波形もどこまで信用できるかは?です。

MOS FETのゲート電圧波形、目盛り線は約2v。
ターンオフがなまっているのはゲート駆動が簡易なためと思われます。
また、ゲートに2.4vのバイアスがかかっているようにみえますが、理由不明。
定電圧電源と抵抗による机上テストだと教科書的にパルス幅変調(PWM)がかかっているのですが、蓄電池と太陽電池がつながれると、そうきれいにはゆかないようです。
左は太陽電池出力が12Aのときに7Aを負荷に流している状態で、さらに出力が増えるとゲート電圧は15vとなってオンのままになります((3)の状態)。
右は出力10Aで7Aを負荷に流している状態で、山が低くなってオン時間が短くなっていますから一応はパルス幅変調になっているようです。
これ以下に出力が減るとゲート電圧は0vとなってオフのままになります((1)の状態)。

左がFETのドレインソース間電圧。
右は負荷(2.2Ω)の電流波形、約7Aと0Aでオンオフしています。
ゲート波形と同様にターンオフがなまくらですが、FETの発熱はたいしたことないのでよしとしておきます。
この反転波形の電流が蓄電池へ送り込まれていることになるはずです。

左は蓄電池近傍の端子台での電圧波形。ピークデイップ間で約0.4vになっています。
(これのみ横スケールは他の約2倍です)
右は96Ah蓄電池1台に直列に0.1Ωを挿入してその両端電圧変化です。
この蓄電池へは4A弱の電流変化になっていることになります。
前記オッシロ波形の蓄電池へ送りこまれている電流と相似になるはずでが、25kHzの高周波だと配線インピーダンスの影響が大きいようで、どこのなにを測っているのかあいまいであてにはならないです。
蓄電池の端子に直接オッシロをつないだ電圧波形は端子台での電圧波形と相似ですが、電圧のピークディップ間ははるかに小さく0.08vです。
(中古密閉型の端子では0.03vくらいでもっと小さい)
一般にいう内部抵抗は電流を流していない状態での値ですが、ここでは電解液の化学反応を含めた動的な内部抵抗の状況が現れていることになります。
4Aの充電電流変化で0.08vの変化なら、蓄電池内で0.02Ωの内部抵抗の変化が生じていることになりますが、これもあてにはなりません。

回路の方はそういうことで、抵抗による発熱の利用を試みてみました。
お風呂の残り湯の加熱(予熱)に使います。
100v用2kwのニクロム線ヒータ(コイル状、長さ約70cm)は直流抵抗が約5Ωで、これを2本並列にして15vにつなげば約6A流れて90wの発熱になります。
これをシリコンチューブで被覆してお風呂の水にほうりこんでおくわけです。
ここではリモートセンシングで動かしています。

1本当たり45wだとヒーターに触っても大丈夫で、水中では暖かくも感じない微々たる加熱ですが無駄のない利用になりそうです。
冬の金魚池にいれてみたら金魚が吸い寄せられるようにヒーターに寄りそっていました(^^)
器具のつながっている末端でも25kHzのパルス波形は観測できますが、TVやラジオ電波のノイズに埋もれた状態になっています。
外部や器具への影響はまずないでしょう。
うちの蓄電池は一般自動車用がメインで、屋外同様の場所においてあるので冬にはめっきりパワーダウンします。
冬だけの利用になりますが、蓄電池を加熱してみました。
アルミ板にセメント抵抗を適宜接着して蓄電池の下に敷き、蓄電池を保温してみました。
これも発熱が90wほどになるように抵抗を分散配置しています。
その結果の温度グラフが下図です。

天候と気温で様相はだいぶ違ってきますが、快晴が2日続いた場合の参考です。
午前中に上限電圧に達し、以降は太陽電池出力を加熱と充電に振り分けた状態が数時間続きます。
蓄電池はなにもしない場合より5℃ほど高く保たれて、蓄電池の能力低下がある程度リカバーされています。
どのくらいリカバーしているかは測定のしようもないのですが、秋なら満タンで10時間使えていたのが真冬では5時間くらいしか使えなくなる、それが7時間くらいに復活している、そんな感じです。
冬ではこの使い方が一番効果的かもしれません。
12vで6Aほど消費できる冷却用のペルチェ素子が市販されています。
余剰を利用した保冷箱が作れれば夏の利用に好都合ですが、ペルチェ素子は熱の良導体であるために使いにくいです。
通電をやめた瞬間に高温側から低温側へ熱が逆流して、せっかく冷やした部分を加熱してしまいます。
その後、外部の熱もペルチェ素子を経由してどんどん流れ込みます。
(カーグッズの保冷箱では通電しっぱなしでないと冷えなかった)
ペルチェ素子を使う場合は相当の工夫が必要そうです。
ちまたに「パルス衝撃による蓄電池の延命」という製品がいろいろ存在します。
効果があるのかどうかは知りませんが、(2)部分の動作はそれと類似になるかもしれません。
http://okmeister.hp.infoseek.co.jp/battery/
DIYバッテリーパルサー、など参照
これらでは充電とは別に「電圧パルス?」を作って加えているようですが、本回路では充電中に25kHzで7Aの「マイナスの電流パルス」を加えていることになります。
1年ほど動かせば「延命効果」についてなにかわかるかもしれません。
寿命を縮めてしまう可能性も含めて、ですけれど(^^;